エクセルで連結会計をしよう!(無料ダウンロードフォーマット付)

0.Introduction

おはようございます。藤木(Xアカウント名、和服)です。
Xで背中を押され2023会計士クリスマスアドベントカレンダー企画に登録させていただきました。
無精な性格が災いし、ブログの更新をこれまでしておりませんが、機会をくださり感謝しております。

本記事の読者として主に会計や税務の専門知識を持っておられる方を想定しております。このため、会計用語に対する説明やいわゆる連結会計一般に関する説明が不十分な点がございます。ご容赦ください。

なお、筆者に文章力がないため、冗長な部分が多々ございます。この点についてもご容赦くださいますとありがたいです。

1.少し自己紹介。

大学で修士まで学んだ後にメーカー開発職を経て、大手監査法人で会計監査を経験。
監査法人退職後は個人税理士事務所を経て独立。独立以来上場会社の決算支援を中心とした業務をしており、本記事のタイトルでもあるエクセル連結による支援は独立以来ずっと行ってきている。
こうした一連の経験から当方が考えたことが2つある。

一つは世の中にエクセルという汎用的なソフトがあり、連結会計という比較的汎用性のある技術があるにもかかわらず、
これらを組み合わせた実務的な記事や現実的に使えるファイルが世の中に出ていないことに不満があった(連結会計+エクセルでググった結果はこちら。)。
もう一つは、

今後も面白い仕事(連結会計)をやって、世の中を良くしていきたい!!

これらが本投稿の一番のモチベーションだ。

2.本題、なぜエクセル連結なのか?

2.1-連結会計をめぐる現状

連結会計はいくつかの規制もあり、その規制の範疇にある会社には必須の技術だ。
会計監査を必須とする会社法の規定がなければおそらくもっと連結会計は一般的になっているであろうとも思う。
また、最近では小規模なM&Aが盛んになってきていることもあり、M&A後の業績の測定をする観点でも連結会計のニーズは拡大をしていると考えている。

2.2-連結会計の大雑把な話

一般的な話だが、連結会計をするには単体の数値を集め、会計基準に沿って算定した数値を連結仕訳として加え、これらを集計し報告フォーマット(有報や短信、役会資料等)へ落とし込む必要がある。
最後の報告作業を除いても、資料収集作業、計算作業、集計作業、さらにはこれらの作業の検証が必要なのである。

こうした、面倒だとも思える一連の作業のうち、集計や計算を機械(システム)にやらせようとするのは至極当然ではなかろうか。
その点、当方も同意する。しかし待っていただきたい。連結会計システムは今の世においてはまだまだ高額なソフトウェアの部類だ。
また、これに加え人員を用意する必要がある。それも連結会計の知識を持ちつつ、連結会計システムに習熟した転職市場内でも中々採用が難しい人材である。フィーも相応にかかるだろう。
要は費用が掛かるのだ。序盤に連結会計の裾野が広がっているのでは、と記載したものの適用のハードルは高い。

そこでひとまず”連結ベースでの自社の状況”を確かめる場合に、こうした追加費用が掛からないエクセル連結を提案している。

要は金銭面での心理的なハードルを下げているのだ。
しかし実際には、エクセルでの連結はフォーマット等がないとなかなか導入が難しい場面も多い。そこでクリスマス特別企画ということもあり、手軽に見れるエクセルファイルを用意した。非常に簡単な数値のみであるが実際に入力もしているため、ご参照いただきつつ、記事を読み進めていただければ幸いである。

2.3-エクセル連結だ!

経理でエクセルを使わない、という会社は無い程どの会社でも日常茶飯事にエクセルは使われている。当方もそれほど複雑な関数を知っているわけではないが、エクセルは日常的によく使う。
このエクセルを利用することで連結会計へのハードルを低くしようとするのが、エクセル連結の狙いの一つである。

世の中にはエクセルの技術的な書籍や記事、ファイル管理のテクニックが溢れている。こうしたナレッジを使ってコントロールできる点もある。すなわち、管理や作成の属人性が低下しやすい。

他に、既に連結システム導入をしている会社に所属をしている経理人員にとってはどうだろう。経理は比較的まじめな方が多く、連結に関与をすることになった、となると勉強を始めるのだ。
その際に、手に取ったのがわかりやすい入門書であったとしても、入門書とペンと紙を使って机上で一人唸りながら勉強をするよりも、座学での勉強に加えエクセルで連結会計の仕組みや中身を手を動かしながら理解する方が有用ではなかろうか。

こうしたいくつかのメリットと、エクセルならではのデメリットとを実務上の運用等を踏まえて次のセクションで紹介しようと思う。

3.エクセル連結の実務

3.1-作成現場(経理)の観点

実のところ、エクセル連結は作業者にとっては厄介な存在だ。
何しろ、自ら仕訳を投入していかねば、自動で計算や仕訳入力をしてくれるわけではないのだ。
例えば、のれんの償却、評価差額のある償却資産の償却額の修正、為替換算調整勘定の計算、非支配株主への利益やOCIの振替え etc.
細かい作業が多い。勉強になる、と言ってしまえばそれはそうだが、何度もやってればそれは単なる作業だ。
この点はある程度関数を組んでどうにかすればよい。例えばのれん等の償却計算は前もって計算をしておき関数で引用すれば、引用のための参照箇所(例えば決算日付)を変更すれば終わる。また、為替換算調整勘定も子会社の外貨建てTBを貼り付けたうえでレートマスタのシートから引用したレートを自動で乗じ算定をする、等の関数の工夫があれば相当工数を省略はできる。非支配株主損益/持分も基本的には同様だ。

ただ、残念ながら報告まで考えると、システムに大きな優位性がある。大手のシステムではAPIで宝やプロネクサスへの連携がされる。ボタン一つで連携され、報告書類に反映されるのはシステムの大きな強みであると思う。

また、システム・エクセルを問わず生ずる工程もある。具体的には単体数値の取り込みや子会社からのパッケージ数値の取り込みやレビュー(このうち、取り込みは大規模な会社では子会社経理が作業をしていることが多い。)等だ。
こうした作業に対しては作業マニュアル、作業進捗チェックシートの作成が望ましい。エクセル連結ではこのチェックをシートとして作成して第3者が視覚的に進捗をわかるようにするのが良いだろう。システムとは異なり、進捗状況は作業者の手入力となるが、大規模な連結を想定していない前提のためそれほど工数がかかるものではない。
なお、入力した仕訳や進捗チェックには作成者のサインと日付を入れよう。例えば、「youfuku,」+「Ctlr+;」といれると「youfuku,2023/12/7」と入力できる。これで何時、誰が作業をしたかという視認性が向上する。

次にチェック担当者の視点だが、こちらは後述する3.4-会計監査人の視点での分析用資料ととも合わせて入力されて仕訳や数値のチェックと分析を進めると効率が良い。また、作業担当者がセルフチェックをできるよう、基礎的な事項(Ex.資本金は連単で一致しているか、等)はチェック一覧シートを作成し、その内容がすべてクリアされたうえで作業担当者が作業を終えているかをチェックするのも有効である。
入力されている連結仕訳に対しては”それぞれの仕訳→根拠資料→TB残高”の順でチェックを進めるが、仕訳の検索性を上げる工夫が必要だ。例えば仕訳をソートで検索できるようにするなどだ。システムはTBで発見した異常な残高に対して仕訳をすぐさま特定できるため、こうした特性を一部でも取り入れる工夫をやっておいて損はない。
また、先に述べた作成者サインについて、チェック者は作成者が適時に実施しているを見るのも重要だ。仕訳の更新漏れはないだろうか?
以上のチェックをした後は、査閲者のサインと日付を入れよう。査閲者欄に「wafuku,2023/12/7」のように入れればOKだ。

ここまでで経理部門内での実務をざっくりではあるが記載してきた。読んでいただいている中で気づかれているとは思うが
・工数が多くなりがち
なのは大きなデメリットであると思う。間違いなくシステムへの投資をしていないためのデメリットだ。しかしメリットはある。
・コストは安い
・作業者やチェック者にとって教科書などで勉強した内容(仕訳)をそのまま入力すれば作成可能
・自動で仕訳が入らない分、勉強にはなる。
といった点だ。システムでは一つの情報を入力するとその仕訳に連動しいくつかの仕訳が起票される。場合によっては予期していなかった科目に増減が生じてしまい、(結果ゼロになったとしても)連結仕訳を見ているだけで正誤の判別がつかない場合がある(だからこそ分析に工数をかけざるを得ないのだが)。こうした仕訳が入らず、直感的に理解しやすいのは大きなメリットであろう。
小規模な連結グループではシステム導入は些かコストをかけすぎる場合がある。こうした場合にぜひともエクセル連結を検討していただきたい。

3.2-利用者の観点

実際のところ、利用者(経営者層、投資家、銀行)の視点からはどういったシステムを使おうともタイムリーに従業員の過度の負担なくより低コストでアウトプットが出てくるのであれば、大きな差はない。
中でも特に経営者層はシステム利用の判断について責任が生じるため、自社の状況に応じてシステムの導入を検討していただきたいというのが本音だ。

しかし、費用対効果が分からないのに対し、投資が難しいという側面は否めないであろう。得てして管理業務は業績への寄与は測定しずらい。
この業績を管理するために連結会計を提案されるので、卵が先か鶏が先か、の議論にもなりそうである。

自社の業績測定の観点であれば、いったん導入をしてみて、効果がなさそうであればやめるという決断が良いように思える。
こうした場合に、大手の連結システムでは明らかに過大投資となるため、エクセル連結に優位性がある。

3.3-内部監査の観点

筆者は内部監査は支援をした事があるものの、専門ではない。一般的な技術になる点はご容赦いただきたい。

連結会計がターゲットとなるのは主に決算財務統制だ。システムに依拠をしない分アクセスコントロール等は気になるところである。
しかし、単にアクセスを制限するだけならば、サーバー上でフォルダへのアクセス制限やオンラインストレージ上でのアクセス制限をかければよい話である。
また、だれが作業したのか?を判別するためにも作業者と査閲者のサインと日付は必要である。
(なお作業履歴について、他のメンバーが記載することが問題なのであれば、それはそもそもその経理チームの誠実性に問題がある。)
これだけでは解決にならないようにも思えるが、こうしたところはエクセル連結の限界でもある。

実際の中身については、3.1に記載した作業手順(マニュアル)やチェックリストがあり、サインがされていれば内部監査の視点でも非常に心強いと言える。
エクセル連結は”作成して数値ができた”だけでは、経理以外の関連者が喜ばないのである。
こうした観点でも3.1に記載をした作業進捗チェックや数値のチェックシートを作成することが必要になるのだ。
このマニュアルやチェックリストの過不足の指摘は内部監査を専門とされる先生方にお願いをしたい。

3.4-会計監査人の観点

最後は監査人の観点だ。おそらく、一般的なシステムと比較すると扱いづらいかと思う。
例えば、業界大手の〇〇システムであれば〇〇という帳票が出せるので、これをPIVOT加工して・・・等、のノウハウがいくつかあるが、多様な切り口で分析をしようとしてもデータ加工に苦労する(時間がかかる=ロスが発生する)ためだ。
これは、監査人から被監査会社にこうしたデータ集計をしてほしい or 経理から社内でも分析をより深くしたいのでどういった切り口でやればいいか、等の会話をし一定の切り口での分析が可能な集計フォーマットを別シートで作る等の対応を要する。
しかし、この話はエクセル連結に限った話ではない。
システム連結であっても社内での分析は必要であるし、その分析方法によっては工数もかかる。ポイントは監査でも必要となる経理側で分析をした資料をタイムリーにアウトプット可能かどうかだ。
エクセル連結では分析の際の加工に時間がかかるという点は確かにデメリットなのだが、これまでの経験上ではそもそも監査人とのコミュニケーションの問題を含んでいることの方が多い。

こうしたそれぞれの観点から想起し得るデメリットについては、エクセル連結のフォーマットの作りこみやお作法で回避できるものがある。
次のセクションではこれらを記載する。

4.作成時はここに注意。

大前提として、連結子会社が多くなれば多くなるほどエクセルでやる意味はなくなってくる。
手間ばかり増え、システムでやった方が効率が良いのだ。筆者はこれまでの7年間で中規模(数十社)な連結グループのエクセル連結に関与をしてきたが、実際に作成してきた立場からしても明らかに効率は悪いし、検証も非常に難しくなってくる。
そのため、エクセル連結のターゲットと考えられる~5社程度を想定した作成時の注意点をいくつか挙げていこうと思う。

連結は以下のようなシート体系が望ましい。例示はしているが、これら以外を必要な場合は適宜加える必要はある。例えば間接保有時の持分計算表等、連結グループの状況に適時合わせることとなる。
ポイントは、こうした一つ一つの検討事項をシートごとに分けて集計・検証する点である。会計監査の経験者ならば理解が容易いとは思うが、表層にサマリーを配置しその後ろのシートにドリルダウンをした資料を並べ検討をしている。結局このような体系が最も直感的にわかりやすく、それぞれのシートで目標も明確化されるため検証もしやすい。

  • 作業工程表、チェックシート
  • 連結精算表(サマリー)
  • 連結仕訳帳
  • 連結仕訳分析表(Ex.連結仕訳の前期比較表等、今回の提供サンプルでは省略。)
  • のれん償却表
  • 内部取引突合表
  • 未実現利益計算表
  • 持分法計算表
  • 各社の単体試算表

シートが分かれることになるため、これらシート間の数値は関数にて引用されることになる。ここで注意いただきたいのは、関数は平易なものを利用する方が望ましい。理由は2点だ。
一つは平易な関数とすることで属人性を下げる。第2に、エクセル連結のコンサルをやる場合は比較的新しい関数を利用して作成すると、導入時に対象会社のエクセルのバージョンが異なることにより関数に対応しない場合がある。こうした事故を回避するためだ。

お作法の話の一つではあるが、各社の単体試算表を修正(Ex.外国子会社の残高について国内会社の残高と一致させる等)する場合には、必ず連結仕訳を通して修正することをお勧めする。理由は連結での調整事項の情報を連結仕訳帳へ集約することによる属人性の回避と第3者からの検証可能性の向上のためである。
単体取り込み、連結仕訳の2つを通して連結精算表を完成させるという基本的なフローを崩さないことが重要だ。

また、すでに述べた通り、運用面では仕訳入力の際にサインと日付を入れることや進捗表や数値チェックも必要に応じて追加・削減することと実施した際にはサインとチェックを入れること。
また、本記事では触れてこなかったが、連結精算表からOCI、連結CF、連結SS等への適用や報告フォーマットへの組替資料の作成等も怠れない。
(ざっくりと書くが、OCIやSSはBS増減とシステム連結でも作成するであろう科目別の増減明細より作成。連結CFはリソースが無い前提とすれば簡便法1択だ。原則法で作るとリソースが足りない。)

エクセル連結はハードルは低いが、そのハードルを必ず超えるためにも終始気が抜けない。

5.終わりに

クリスマスアドベントの特別企画として本記事を記載させていただいたが、いかがであっただろう。
何分、「連結会計」というとてつもなく幅広いテーマであったため、至らぬ点が多くここまで読んでいただいた読者には申し訳なさが残る。
しかし、この記事でエクセルでまともな連結ができるのか?という疑問を少しは払しょくできたのではないだろうか。
少なくとも、現在世に出回っているエクセルフォーマットよりかは幾分使えるような形式のものも提供できたとは思っている。

記事の中ではひたすらエクセル連結をゴリ押ししたが、連結システムの進展も目覚ましく、システムを用いた連結決算の支援もしている立場としてはシステム連結は十分に検討し利用する価値があるものだ。
丁度1年前にはMFクラウドでも連結システムをリリースしており、業界の活性化が期待される。
企業の規模、適用される基準や取引の複雑性、関連規制の状況等を鑑み、独立した立場としては企業に合った提案を心掛けていきたいものである。

会計士の中には決算支援に関与をされている先生も多い。
もちろん、筆者もこうした気の抜けない作業の連続である連結決算の支援をしている。アウトソースとしてご検討いただければ大変ありがたい。連結の仕事であればいつでもウェルカムだ。

本記事はここで終わりとなるが、X等で感想を投稿いただけると幸いである。

最後に、企画参加への背中を押してくださったkazu先生、大野先生、てりたま先生に感謝をしつつ、本記事の終わりとする。

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